2008-11-27
【鈴木商店ロンドン支店に宛てた手紙】
お互いに商人としてこの大乱の真中に生れ、しかも世界的商業に関係せる仕事に従事し得るは無上の光栄とせざるを得ず。即ちこの戦乱の変遷を利用し大儲けを為し三井三菱を圧倒するか。然らざるも彼らと並んで天下を三分するか。これ鈴木商店全員の理想とする所なり。小生共これが為め生命を五年や十年早くするも縮少するも更に厭う所にあらず。要は成功いかんに在りと考え日々奮戦罷あり、おそらくはドイツ皇帝カイゼルといえども小生程働きおらざるべしと自任しおる所なり、ロンドンの諸君ここに協力を切望す。小生が須磨自宅において出勤前この書を認むるは、日本海々戦における東郷大将が彼の「皇国の興廃此の一挙に在り」と信号したると同一の心持なり。